インプラント治療で抜歯が必要な理由とは?
抜歯即時埋入法について解説
- コラム

「インプラント治療を考えているけれど、抜歯が必要と聞いて不安…」
「抜歯即時埋入インプラントという治療法があるらしいけど、一体どんな方法なの?」
このような不安や疑問はありませんか?
インプラント治療は、失った歯の機能を補うための、選択肢の一つです。しかし、虫歯や歯周病が進行している場合など、状況によっては抜歯が必要になることがあります。
本記事では、インプラント治療で抜歯が必要な理由と、抜歯即時埋入インプラントについて解説します。
インプラントはなぜ抜歯が必要なの?
インプラント治療は、顎の骨に人工歯根(インプラント体)を埋め込み、その上に人工の歯を装着する方法です。そのため、以下のような状況では、インプラント治療をスムーズに進めるために抜歯が必要となることがあります。
- 菌に汚染された歯の根だけが残っている場合(残根状態)
- 重度の歯周病で顎の骨が溶けてしまった場合
重度の虫歯や外傷によって歯の頭の部分(歯冠)が失われ、歯の根だけが顎の骨の中に残っている状態を「残根(ざんこん)」と言います。この残根があるとインプラント体埋入の妨げとなるため、抜歯が必要になります。また、残根が感染源となり、周囲の組織に炎症を引き起こすリスクもあるため、事前に抜歯が必要となるケースが多いです。
歯周病は、歯を支える顎の骨を溶かしてしまう病気です。自覚症状に乏しく、気づいたときには歯がグラグラと動揺していたり、抜け落ちてしまったりすることもあります。そのような場合に検討されるのがインプラント治療です。
しかし、インプラント治療は、インプラント体を支えるための十分な顎の骨が必要です。歯周病によって顎の骨が大きく溶けてしまっている場合、抜歯してもそのままではインプラント体を埋め込むことができません。その場合、「骨造成」と呼ばれる骨を増やす治療が必要になることがあります。
当院がおこなう抜歯即時埋入インプラントとは

通常、インプラント治療は、抜歯後、歯ぐきや顎の骨が回復するまで2~3か月、場合によってはそれ以上の期間を待ってからインプラント体を埋め込みます。これは、抜歯後の傷口からの細菌感染を防ぎ、インプラント体と骨がしっかりと結合する(オッセオインテグレーション)時間を確保するためです。
抜歯即時埋入インプラントは、その名の通り、歯を抜くと同時にインプラント体を埋め込む治療法です。抜歯と同時にインプラント体を埋め込んでも、適切な処置と管理を行えば、その後の経過に大きな差がないことが分かってきました。
抜歯直後は傷口からの細菌感染のリスクが高まるため、感染リスクを十分に考慮し、処置を行う必要がありますが、通常のインプラント治療に比べて治療期間の短縮や手術回数の削減といったメリットが期待できます。また、前歯など、見た目が気になる部位の歯を抜いた場合、すぐに仮歯を装着できるので、審美的な問題を抑えられるのもメリットと言えるでしょう。
しかし、抜歯即時埋入インプラントは、すべての方にできるわけではありません。以下のような条件を満たす必要があります。
- 抜歯する歯や周囲の組織に重度の炎症や感染がないこと
- インプラント体を支えるための十分な骨の厚みや高さがあること
- 良好な初期固定(インプラント体と骨の結合)が得られる見込みがあること
- かみ合わせや歯ぎしりなどの問題がないこと
- 糖尿病などの全身疾患がなく、傷の治りに影響がないこと
- 喫煙習慣がない、あるいは禁煙できること
抜歯即時埋入法の流れ
ここでは、抜歯即時埋入法の流れを解説します。
1. 精密検査・治療計画の立案




まずは、精密な検査を行い、患者様のお口の状態を詳しく把握することから始まります。
レントゲン撮影や歯科用CT撮影で顎の骨の量や質、神経や血管の位置などを3次元的に把握。これらの検査結果をもとに抜歯即時埋入インプラントが適応可能かどうかを診断します。
使用するインプラントの種類や埋入位置といった治療計画を立案し、詳しくご説明します。患者様が治療内容に十分ご納得いただいた上で治療開始です。
2. 抜歯とインプラント体の埋入
局所麻酔を行い、歯を抜きます。抜歯によって生じた穴(抜歯窩)は、そのままインプラント体を埋め込むためのスペースとして利用しますが、必要に応じて専用のドリルを用いて形態を整えます。
骨の量が不足している場合は、骨補填材(人工骨や自家骨)を用いて、骨の再生を促す処置(骨造成)を行うことも。その後、インプラント体を抜歯窩に埋め込みます。
3. 仮歯または保護キャップの装着
インプラント体を埋め込んだ後、その上部に仮歯または保護キャップ(ヒーリングアバットメント)を取り付けます。
仮歯や保護キャップは、インプラント体と骨が結合するまでの間、インプラント体を保護し、周囲の組織の治癒を助ける役割を果たします。
インプラントの初期固定が弱いなどの理由で、仮歯を装着できないと判断されることもあります。その場合は歯肉を縫合して閉じます。
4. 治癒期間
インプラント体と顎の骨がしっかりと結合するまで、約3~6か月間の治癒期間を設けます。この期間中は、定期的に歯科医院に通院し、仮歯の調整や経過観察を行います。
5. 人工歯の作製と装着
インプラント体と顎の骨がしっかりと結合したことを確認した後、型取りを行い、患者様の歯の色や形に合わせた人工歯を作製します。かみ合わせや見た目などを確認し、問題がなければインプラント体に装着します。
6. メインテナンス
インプラントを長持ちさせるためには、歯科医院での定期的なメインテナンスと、ご自宅での丁寧なセルフケアが欠かせません。メインテナンスでは、インプラント周囲の炎症の有無、かみ合わせの状態などを確認し、インプラント周囲のプラークや歯石を除去します。
まとめ
インプラント治療では、歯の根だけが残っている場合や、重度の歯周病で顎の骨が溶けてしまった場合などに抜歯が必要となることがあります。
抜歯即時埋入インプラントは、抜歯と同時にインプラント体を埋め込む治療法で、治療期間の短縮や手術回数の削減といったメリットが期待できます。
しかし、すべての方にできるわけではありません。CT含め精密検査を受けたうえ、歯科医師とよく相談し、ご自身に合った治療法を選択することが大切です。