歯周組織再生療法とは?GTR法・エムドゲイン法・リグロスの違いを解説
- コラム

歯周病が進行すると、歯を支える組織が破壊され、最終的には歯を失ってしまうことがあります。
これまで、重度の歯周病で失われた歯周組織を完全に回復させることは難しいとされてきました。しかし、近年では、「歯周組織再生療法」によって、歯を残せる可能性が広がっています。
そこで本記事では、歯周組織再生療法とはどのような治療法なのか、歯周病を悪化させないためにできることなどを解説します。
歯周組織再生療法とは?
歯周病は、歯を支える周りの組織(歯周組織)に炎症が起こり、進行すると歯を失う原因にもなる病気です。歯周病が進行すると歯と歯ぐきの間に「歯周ポケット」と呼ばれる深い溝ができ、そこに歯垢(プラーク)や歯石がたまります。その場合、歯周ポケットに溜まった歯垢や歯石を取り除くことで症状の改善が見込めます。しかし、重度の歯周病では、一度失われた歯周組織は自然には回復しません。そこで行われるのが歯周組織再生療法です。
歯周組織再生療法は、歯周病によって失われた歯周組織を意図的に再生させる治療法です。この治療により、歯のぐらつきを改善し、噛む機能を回復させ、できる限り自分の歯を残すことを目指します。
3つの歯周組織再生療法
歯周組織再生療法には、いくつかの種類があります。ここでは、代表的な3つの方法、「GTR法」「エムドゲイン法」「リグロス」について、それぞれ詳しくご説明します。
GTR法(組織再生誘導法)
GTR法(Guided Tissue Regeneration:組織再生誘導法)は、特殊な膜(メンブレン)と、必要に応じて人工骨などを使用し、失われた歯周組織の再生を促す治療法です。
まず、歯周ポケット内の歯垢や歯石などの汚れを徹底的に除去します。次に、骨が失われた部分に人工骨などを填入し、その上からメンブレンで覆います。メンブレンは、歯肉などの組織が骨の再生スペースに入り込むのを防ぎ、歯槽骨や歯根膜といった歯周組織が再生するための空間を確保する役割がある人工膜です。
GTR法は人工膜の種類によって保険が適用されるため、費用負担を抑えることができるという特徴があります。
リグロス
リグロスは、細胞の働きを活発にする成長因子(ヒト塩基性線維芽細胞増殖因子:bFGF)を主成分とする薬剤「リグロス®」を使用する治療法です。歯周組織の細胞に働きかけ、細胞を増やしたり、血管を新しく作ったりするのを助け、歯肉や歯槽骨の再生を促進します。
治療の流れはエムドゲイン法とほぼ同様です。歯根表面を清掃した後、歯槽骨が失われた部分にリグロス®を塗布します。リグロスは保険適用されるため、費用負担を比較的抑えることができます。
エムドゲイン法
エムドゲイン法は、豚の歯胚組織から作られた特殊なたんぱく質(エナメルマトリックスデリバティブ)を主成分とする薬剤を使用する治療法です。歯周組織の再生を促す成長因子のような働きをし、歯が生えてくるときと似た環境を再現することで、歯周組織の再生をサポートします。歯根表面の汚れをきれいに取り除いた後、歯槽骨が失われた部分に薬剤を塗布します。
エムドゲイン法は、手術が1回で済む場合が多く、患者様の体の負担を軽減できるのがメリットです。しかし、自費診療となるため、GTR法などと比較すると費用が高額になる傾向にあります。
歯周病を重症化させないために
重度の歯周病は、通院回数が増えたりするだけでなく、治療費の負担も大きくなります。歯周組織再生療法のような大がかりな治療が必要となる状況を避けるためには、歯周病を予防し、進行させないことが大切です。そのためには、ご自身で行う「セルフケア」と、歯科医院で行う「プロフェッショナルケア」の両方が欠かせません。
毎日の「セルフケア」

ご自身で行う毎日の歯磨きは、歯周病予防の基本です。歯ブラシだけでなく、デンタルフロスや歯間ブラシを使い、歯ブラシでは届かない部分の汚れもしっかり取り除きましょう。
歯磨きにはどうしても癖があり、磨き残しが出やすいものです。歯磨きが終わったら鏡で磨き残しや出血がないか確認する習慣をつけましょう。「右下の奥歯から順番に磨く」など、自分なりのルールを決めて、磨き残しを防ぐ工夫も効果的です。
また、体の免疫力は歯周病の進行にも大きく関わっています。免疫力を高めるためには、栄養バランスの取れた食事が不可欠です。野菜や果物、タンパク質、炭水化物などをバランス良く摂取し、体の内側から歯周病に負けない体を作りましょう。
歯科医院での「プロフェッショナルケア」

お口の中には、セルフケアだけではどうしても落としきれない汚れや歯石化した汚れがあります。半年に1回程度の頻度で歯科医院を受診し、クリーニングを受けるのが理想的です。
また、歯科衛生士によるブラッシング指導を受けることもできます。正しい歯ブラシの当て方、動かし方、デンタルフロスや歯間ブラシの使い方などを丁寧に教えてもらえます。
自分に合った歯ブラシの選び方や効果的な磨き方を学ぶことで、毎日のセルフケアの質を格段に向上させることができるでしょう。
まとめ
歯周組織再生療法は、歯周病によって失われた歯周組織を意図的に再生させる治療法で、GTR法、エムドゲイン法、リグロスなどの種類があります。
歯周病を重症化させないためには、毎日の丁寧なセルフケアと歯科医院での定期的なプロフェッショナルケアが欠かせません。
早期発見・早期治療を心がけ、歯周組織再生療法が必要な状況にならないよう、日頃から歯周病予防に努めましょう。